エピソード06 - エアロダイナミクス

進化技術

 

エドアルド・レノーチのインタビュー、
ドゥカティ エアロダイナミクス責任者。

世界でいち早くモーターサイクルのエアロダイナミクスの研究開発を始めたのがドゥカティです。そして、私達は世界トップクラスのモーターレースのエアロダイナミクスに革新を起こしました。それは本当です。

空力設計の方法論の発展はドゥカティ・コルセと深い関係にあり、それゆえにユニークなプロトタイプレースマシンへとつながっています。わずか1000分の1秒が大きな違いを生み、秀逸であるために極めて高い基準が求められる世界。シーズンごとにプロジェクトは変化、進化しますが、そこにはいくつかのマイルストーンが残されています。

この点について、エアロダイナミクスエンジニアのエドアルド・レノーチに話を伺いました。

「エアロダイナミクスプロジェクトGP16は、私達が手がけた中で間違いなく最も野心的かつ効果的なプロジェクトだといえます。MotoGPのレギュレーション変更により、エアロ性能の向上に向けた開発を続けることができなくなりました。現在許可されている空力プロファイルはCラインを閉じることが規定されていますが、これでは全体の効率は下がります。

私達のプロジェクトは最良のものでしたが、2017年に中断されてから、何とかして継続する方法を模索していました。最良のエアロダイナミクスプロジェクトに新たに命を与えるために。」

ドゥカティのレースマシンは常にトップ性能のエンジンを搭載しており、それ自体は新しいことではありません。けれども、それほどのパワーを適切に扱うには、地面にそれをいかに伝えられるかがすべてになります。そして、ここでエアロダイナミクスが大きな役割を果たすのです。

「GP16のウィング設定によって1708に発生する垂直荷重は、実にセンセーショナルです。例としてPanigale V4を基準にすると、V42020のエアロ・パッケージアップグレードではダウンフォースが30%増加し、プロジェクト1708に導入したものだと50%まで増加します。この数値は非常に重要で、その影響はライディングスタイルに即座に現れます。」

 

 

本物のイノベーションとは複雑にするものではなく、簡素化するものです。このエアロ・パッケージを1708に採用したことで、より乗りやすいマシンに仕上がっています。電子システムが作用しパワーを抑える必要性を少なくし、車両の全パワーをフルに活用します。フロントの垂直荷重により、加速時のハンドリングが容易になります。スロットルを早めに開いても、バイクは地面に密着を続けます。

「特に先進モーターサイクルではエレクトロニクスによる膨大な支援が必要だと思われがちですが、実はそうではありません。さまざまな動的・空力特性を研究することで、必要とされるエレクトロニクスの介入をより少なくすることができます。ウィング面はインテリジェントに機能し、速度が上がるほどに安定性が高まるため、例えば、アンチウィリーシステムの介入の必要性を低減します。この特性は、カーブを出るときとフル加速したときにはっきりと感じられ、エレクトロニクスの介入を抑えて駆動トルクの低減が少なくなっています。」

 

例えば、ムジェッロのテストでは、最終コーナー出口の空力性能だけで、ストレートで8メートルのリードを得られることが分かりました。8メートルといえば大きなリードです。

新たな方法を模索する中で、想定外の革新ソリューションを見つけだすのは、もはやドゥカティのDNAの一部なのです。この想定外のイノベーションは、私達の性格とアイデンティティの重要な部分であり、進化を続けながらも間違いなくドゥカティそのものです。

「このプロジェクトに取り組み、この車両にGP16の空力開発をもたらしたことは、本当に重要なことです。なぜなら、それは驚異的なパフォーマンスを追加するだけでなく、文化にも変化をもたらすからです。市販モーターサイクルに空力学を取り入れることで、MotoGPでの研究成果を市販車両の開発に応用するという文化的な変化をドゥカティはもたらしたのです。数レースの素材耐久性を突き詰めるプロトタイピングという限定された環境で培われた知識を取り入れることによって、普通のファンがプロライダー並みのフィーリングを味わうことを可能にしてくれます。しかしながら、本当の文化とは数レースに限られたプロトタイプを目標とするMotoGPの世界では成し得ないことです。それは公道でこそ成し得ることです。公道こそ、これらの革新技術がテストされるべき本来の場所なのです。これは大きな転換点といえます。この変化をモーターサイクル文化の一部として、私達が受け入れる助けとなるからです。」